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■ フクロモモンガの体

体の特徴

大きく少し突出した眼をしています(写真)。夜行性であるフクロモモンガはわずかな光さえあれば見えるように、眼の中で光を反射するタペタムと呼ばれる層が存在しています。
ライトを当てると眼が光るのはこのためです。
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大きな耳をしており、わずかな音も聞き逃しません。
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嗅覚に優れています。鋭い嗅覚は匂い付け行動、食べ物探し、仲間の認識のために重要であり、
ほかの群れの個体の侵入、繁殖のタイミング、捕食動物の存在など、さまざまなものを鼻で感じ取っています。


ネズミの歯に似た鋭い切歯(前歯)をもっておりますが、
伸びることはなく、かけてしまったら元に戻ることはありません。

飛膜
樹木から樹木への移動時に滑空するために前肢小指から後肢親指、
尾の付け根から後肢小指にかけて伸びる膜をもっています(写真)。
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尻尾
体長と同じぐらいの長さをもつ尻尾は、滑空する際にラダー(舵(かじ))の役割を果たし、
方向をコントロールするのに役立っています。


前足の第4指はほかの指よりも長くなっており、木々の隙間から昆虫を引っ張り出すのに役立っています。
後ろ足は5本の指をもち、第2指と第3指は合わさっており、第1指と向かい合うようになっています。

臭腺
フクロモモンガには臭腺と呼ばれる匂いを分泌する場所があり、フクロモモンガの独特な匂いの出所です。
前額腺、胸腺、肛門腺、手足の表面、口の隅、外耳の内側などに存在します。
群れの中で優位な雄は額を群れの仲間に擦り付けて匂い付けをします。
このおでこにある前額腺は、雄では特に分泌された液体によりひし形状に脱毛し、雌雄の判別に役立ちます。
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フクロモモンガの臭腺は雄の額が有名ですが、胸にもあります。
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※麻酔下での撮影です


総排泄腔
フクロモモンガは、肛門、尿道、生殖器の出口が一つとなっており、これを総排泄腔と呼びます。

繁殖
野生のフクロモモンガは季節繁殖動物で、オーストラリアでは6~11月に繁殖期を迎えます。
子どもが産まれる頃は昆虫の多い時期にあたります。発情は29日周期で起こり、発情期間は2日です。
飼育下では周年繁殖が可能です。
 雄のペニスはYの字型をしており(写真)、興奮すると出ることがあります。
Yの字の先端からは精子が、分岐部からは尿が出ます。これと合うように雌の腟(ちつ)もYの字型になっています。
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陰嚢(のう)は総排泄腔前方の腹部にぶら下がるように存在しています。
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※全身麻酔下での撮影です

1回の妊娠で大体2匹身ごもり、15~17日で出産をします。
雌は育児嚢(写真)と呼ばれる生まれたばかりの子どもを育てる袋をもっています。
生まれた子どもは体長約5mmで、陰部から育児嚢に移動します。
育児嚢の中には乳首が4つあり、この中で授乳をし、成長した後、生後約70~74日で育児嚢から出てきます。
100~120日後には離乳をします。性成熟は雄で12~15カ月、雌で8~12カ月です。
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■ フクロモモンガの生態と食餌

近年、フクロモモンガを取り扱うペットショップが増えてきました。フクロモモンガは、
日本にいる野生のモモンガとは異なる有袋類です。
しかしながら、その生態をよく知らないまま飼いはじめ、
正しい食餌を与えないことで、フクロモモンガが体調を崩してしまうこともあります。
まずは、正しい食餌を食べるように飼育することが最も大切です。



分類と生態
 フクロモモンガは、哺乳網、獣亜網、カンガルー目、フクロモモンガ上科、
フクロモモンガ科、フクロモモンガ属に属しています。
野生ではオーストラリア北部から南東部、ニューギニア島、ビスマルク諸島といった温暖な森林や熱帯多雨林に住んでいます。

生態
主に樹上で生活をしており、地面に降りることはほとんどありません。
通常は樹洞を住処(すみか)としています。
木から木への移動の際には、英名(Sugar Glider)の由来にもなっているように、
グライダーのように滑空します。飛行距離は最長50mともいわれています。

フクロモモンガは夜行性であり、夜間は食べ物を探しに活動し、
昼は巣に戻り群れの仲間とともに寝ています。
群れの仲間は大体6~10匹ほどの小さな群れで、
群れの中でのひどい闘争は起こらないといわれています。
しかし、群れと群れの間では縄張り争いが繰り広げられることはあります。
社会性の高い動物で、匂い付けや鳴き声で仲間同士のコミュニケーションをとります。
気候が暑過ぎたり、寒過ぎたりするとエネルギー消費量を抑えるために、
1日に16時間も休眠することもあります。

寿命は野生下では5~7年、飼育下では12~15年といわれています。
体長は12.7~15.2cm、体重は雄では100~160g、雌では80~130gほどです。

食餌
食性フクロモモンガは昆虫食傾向の強い雑食性の動物です。
不明な点も多く、栄養学的な研究は進んでいません。
野生下の餌は、ユーカリやアカシアの木の樹液や樹脂、花蜜や花粉、糖蜜、
さまざまな昆虫やクモ類、鳥の卵、小さな鳥や齧歯(げっし)目、トカゲなどです。
これらから、現在は動物質と植物質を同量程度摂取していると考えられています。
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<飼育下では必ずしも昆虫を与える必要はないが、与えると喜んで捕えて食べる。
 バランスを考え、モモンガフードをしっかり食べるように飼育したい>



また、野生では春から夏には昆虫類を中心に食し、
秋から冬にはユーカリやアカシアの木の樹液や樹脂、
花の蜜、それを狙ってやってくる昆虫を食すなど、
季節により食べるものが大きく変わるという特徴をもっています。

フクロモモンガは食べ物の選り好みが激しく、
偏食となり、必要な栄養素をとれず病気となることも多いので注意が必要です。
また、野生のフクロモモンガでは1日に43~55kcalで
体重の17%に当たるエネルギーを消費していると考えられています。
しかし飼育下では、野生に比べると運動量が制限されている分、消費量も少なくなります。
さらに、飼育環境で与えられる食餌は吸収の良いものが多いため、
飼育下のフクロモモンガは比較的肥満になりやすいです。
これらの理由から、野生と比べて与える食餌は少量にすべきであると考えられています。肥満の母親から生まれた子どもは若齢性の白内障になるということも知られています。

動物性タンパク質の供給源として、市販のフクロモモンガフードを与えると良いでしょう。
野生下ではさまざまな種類の小動物を食すことで、栄養を摂取しています。
フクロモモンガフードはそういった栄養素の偏りが比較的少ないものとなるために勧められます。
しかし、上記のようにフクロモモンガの正確な食性はわかっていないため、
フクロモモンガフードだけで育てるのではなく、ほかの食餌も与えるようにしましょう。

フクロモモンガフードが手に入らなければ、
フェレットフード、ドッグフード、キャットフードなどでも代用が可能です。
ほかにもコオロギ、ミルワームなどの昆虫、鶏肉、ゆで卵なども給餌できます。
生きた昆虫類を与える際には必ず昆虫自身に餌を与えるなどして、栄養状態を良くした状態で与えましょう。
 炭水化物の供給源としては、樹液や果汁などが必要です。
新鮮な果汁、メープルシロップ、はちみつなどや花蜜用鳥のフードであるローリー用のネクターなどが挙げられます。
 ほかにも果物、野菜、ナッツ、種子(ヒマワリ、カボチャ)などのさまざまな餌を食べますが、
これらは野生での主要な食餌ではないので、与える食餌の10%以下にするべきです。
果物を適切なタンパク質やカルシウムによって骨粗鬆症や歯周病に罹患しやすくなるといわれています。

フクロモモンガは昆虫などの内容物を食べ、硬い部分を捨てるといった
、少し特徴的な食べ方をします。そのため、
食器の周りは食べかすで汚れてしまいますが、それは正常な行動です。

ケージ全体が汚れるのを防ぐ目的で、餌場全体をフクロモモンガが出入りできる穴を開けたプラスチックケースで覆うものを海外ではグライダーキッチンと呼んでいます。夜行性の動物であるため、食餌は夕方から夜にかけて与えると良いでしょう。
飼育温度は24~27℃が推奨されています。

鳴き声
 フクロモモンガは感情によってさまざまな鳴き声があります。
嬉しいときは「プププ」と聞こえる鳴き方をします。
驚いたときや怖がっているときは、警戒音、威嚇音として
「ギーコギーコ」「ジーコジーコ」といった鳴き方をします。
この鳴き声をあげているときには、後ろ足で立ち上がり、前足を広げるようにして、
口を開けていることが多いです。
また、仰向けになって四肢を突き出すようにしている場合もあります。
イライラしているときや何か不満があるときは「シューシュー」と鳴きます。
ほかの個体を探しているときには子犬のような鳴き声で
「ワンワン」「アンアン」と鳴きます。これは繁殖期にもよく聞かれる鳴き声です。

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