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■ ウサギの胃腸疾患(毛球症・胃腸うっ滞・盲腸便秘・鼓腸症・急性胃拡張)

うさぎさんのよくある病気に胃腸疾患があります。
来院するうさぎさんの約半数近くが、この病気で来院します。

うさぎさんは、複雑な胃腸のシステムを持っています。
その、システムのバランスが崩れたときに、この病気になります。
かつては、毛球症とひとくくりにされていましたが、
必ずしも、お腹のなかに停滞した「毛」だけが原因ではありません。

毛が溜まっている、という状態はすぐには判りませんので、それらを
まとめて、獣医学的に胃腸うっ滞と言ったり、鼓腸症と言ったりして先生によって違います。
あまり病名にこだわる必要はありません。(あまり意味が無いからです)


お腹の中を見るための、レントゲンの勉強をしてみましょう。

ふつうは、麻酔をしないで、うさぎさんを軽く押さえて写真下のように撮影します。カシャ♪



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イラストです。
臓器の位置関係はこんな感じです。

rabbitillust1.jpg

現像をしますと、こんな風に写ってきます。
rabbitxraynomal.jpg
これは、正常な個体のレントゲン写真です。
これでは、あまりはっきりしていませんね。
はっきり判らないのが正常なのです。


では、次ぎ。正常なうさちゃんに
バリウムというレントゲンに白く写る液体を飲ませたレントゲン写真です。
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胃から盲腸にバリウムが流れ込み、盲腸から直腸かけて大きなウンチが並んで
ウンチが出そうな状態になっているのが判ります。
これは健康で正常です。

では、これはいかがでしょう?
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胃や盲腸に多量のバリウムが溜まり気味で、ウンチもゴマ粒のように小さいのがわかります。
これは、胃腸うっ滞、盲腸便秘、と呼ばれる状態です。
こうなってしまうと、食欲も少なく、ウンチも小さいです。

では、これはどうでしょうか?
rabbitxraykocho.jpg
なにやら、胃と盲腸の部分が黒くなっていますね。
黒い部分は、ガスが溜まっているのです。
異常な発酵を起こしていることが判ります。これでは、餌は食べないです。
慢性的な状態(鼓腸症)のことが多いです。

最後にこの写真。
rabbiteacute.jpg

胃の部分が大きくなっており、真ん中が黒く抜けているのが判りますか?
これは、「急性胃拡張」という状態です。
うさぎさんはある時、とつぜん餌を食べるのをやめ、ジッと伏せて動かなくなります。
拡張した胃のため、激しい痛みに襲われており、緊急性の高い状態です。
適切な治療を行ったとしても数時間~数日で死亡することもある怖い病気です。
早めの受診が必要です。

治療には鎮痛剤の投与や体液組成の調節が必要です。
以上、ざっとうさぎさんの胃腸のレントゲン写真を説明しました。
動物病院で説明を受けるときの参考にしてください。


うさぎの消化器官は繊細です。
ストレスが強くかかったり、想定外の食べ物が入ると、
とたんに異常な発酵、機能不全になります。

うさぎを健康に飼うことは、すなわち、健康な消化器官を保つこと。
予防は、簡単なようで難しく、
なるべくストレスをかけず、良質の牧草を多く食べてもらうこと、良質ペレットを与えることです。
遠くに連れ回したり、クッキーなどのおやつ類はあまり与えないようにします。

これが、全てといっても過言ではありません。

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ジャンル : ペット

テーマ : うさぎ

■ ウサギの病気 -盲腸便秘・鼓腸症-

ウサギの盲腸便秘とは盲腸の動きが悪くなって、盲腸内に内容物が停滞してしまう状態のことをいいます。
この内容物は固形のものだけではなく、液状のものの場合もあります。

一方、鼓脹症は腸の中にガスが貯留した状態で、
主に盲腸にガスが貯まってしまう病気です。
ウサギは腸管の動き(ぜん動運動といいます)が低下することによって、
盲腸便秘を起こしたり、盲腸の異常発酵がもととなってガスが溜まり鼓脹症をしばしば起こすことがあります。

【症状】
漠然と元気が無くなってしまったり、呼吸が荒くなる、腹部が膨れてきたりします。
また、食餌の量がが低下したり、全く食べなくなってしまったりします。
便の減少または排便が見られなくなるなどの症状がみられます。

【予防のポイント】
歯の病気や胃の病気、餌に含まれる食物線維の不足、高蛋白質、高カロリー食餌の多給、ストレスなど様々な原因によって、消化管のぜん動の動きが低下することに起因しています。

歯や胃の基礎疾患を把握し、日頃から餌にはなるべく高線維のもの、たとえばワラや乾草、牧草などを与え、
ビスケットなど炭水化物の食品は極力与えないように心がけます。
また飼育環境を整え、ストレスを与えないよう心がけます。

【治療】
治療には消化管をなるべく動かすような処置を行います。
消化機能改善剤、食欲増進剤などを投与したり、盲腸内の善玉菌(正常な腸内細菌叢)の乱れが疑われる時には抗生物質を使って細菌叢をうまくコントロールしたり、場合によっては点滴を行って水分や電解質を補ったり、擦りおろし野菜やヨーグルトなどの強制給餌などを行います。

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盲腸内にガス(矢印)が溜まっているレントゲン像

ジャンル : ペット

テーマ : ウサギ

■ ウサギの素朴なQ&A

Q1.ウサギのお手入れは、どうすればいいの?シャンプーは?カットは?
A1.ウサギのお手入れには全身にブラッシングするグルーミングを定期的にしてあげしょう。
余分な毛は自分で舐めて胃に毛玉がたまり病気になってしまうからです。
全身のシャンプーは基本的に行いませんが、お尻まわりが汚れたりしたらそこだけ洗います。
ウサギの毛は乾きにくいですがしっかり乾かしましょう。
カットも特に必要ありませんが、長毛種で汚れやすいところは部分的にカットしても構いません。

Q2.ウサギに予防注射はいらないの?いるとしたらどんな伝染病があるの?
A2.ウサギに予防注射はありません。
必要ない、というよりはペットウサギ用の予防注射薬がない、ということです。
ウサギには細菌や寄生虫などいくつかの怖い伝染病がありますが、現在のところそれを未然に防ぐというのは不可能です。
ですから日ごろより十分に健康状態をチェックしておき、何かおかしなことがあればすぐに動物病院へ連れて行き診察してもらいましょう。

Q3.ウサギは本当ににんじんが一番好きなの?
A3.本来、野生下のウサギは、主に牧草のような水分や栄養価の少ない草を食べて暮らしています。
人間が食べているようなみずみずしいおいしい野菜はなかなか食べる機会がないので、ウサギにとっては大馳走になります。
にんじんに限らず大好きだからといって水分の多い野菜をたくさん食べさせるとウンチがゆるくなってしまうことがあります。
よって、あまりたくさん与え過ぎないよう注意しましょう。

Q4.ウサギには犬みたいにお散歩が必要?
A4.ウサギにお散歩は必要ありません。
ウサギはもともと臆病な動物です。野外に連れて行ってもうまく歩いてくれませんし、何かで驚いたら急に跳びはねて危険ですので、特別なことがない限り外へのお散歩は止めましょう。
とはいっても適度な運動は必要ですのでお部屋に放して運動させてあげましょう。
お部屋に放すときは、電気コードやじゅうたん、カーテンなどをかじらないよう前もって注意しておきます。

Q5. ウサギには人間の言葉がどれくらいわかるの?
A5.とても難しい質問です。そもそもウサギは自己表現がとっても苦手な動物ですから。
たとえ言葉をわかっていたとしても人間側がそれを理解できるかわかりません。
実際に名前を呼んで寄ってきたり、きまって前足をなめる行動をしますので少しはわかっているということに生るでしょう。
犬のように何かを持ってきてもらうような高度なことはやはり難しいでしょう。

Q6.ウサギの視力はどれくらい?
A6.ウサギはとても眼のいい動物です。
視力だけでなく、見える範囲も真正面からお尻のほうまでぐるりと360℃近くものを見ることができます。すなわち、お部屋の中を体を動かすことなく、見渡しているのです。
しかし歳をとると人間と同じように白内障になり、見えなくなることもあります。
うさぎは自然界ではとても弱い動物ですので、視力にたより危険を感じれば跳びはねて逃げることで自らの命を守っています。

Q7.トイレを覚えさせるよい方法はないでしょうか?
A7.雄のウサギだとマーキングや抗議行動としておしっこをとばすことがあります。
去勢手術をすればこの行動がおさまることもありますが、100%確実な方法でもありませんし、これだけのために去勢手術を行うのは抵抗もあるでしょう。
緊急処置としてはケージの周りをダンボールで覆ったりすることでしのげますが、やはり掃除や臭いのことを考えるとトイレを覚えてもらいたいですよね。
ウサギは通常、おしっこを決まった場所でする動物なのでトイレを覚えさせることは可能です。
ウサギが好む排泄場所は「隅」で、なおかつ「自分の排泄物の臭いが残っている所」なので、ケージや部屋の隅にトイレを設置し、トイレ以外でおしっこをした場合は臭いが残らないように掃除をしてトイレにだけ臭いが残るようにしましょう。
トイレを覚えるまでの期間には個体差がありますので、すぐにあきらめずに繰り返し覚えさせるように頑張ってください。
また、今まできちんとトイレでしていたのに急に粗相をするようになった場合、泌尿器系の病気、飼い主への要求などのサイン、繁殖期などが原因として考えられます。
排尿時の様子や尿を観察して異常がみられたら泌尿器の病気の可能性が大きいので動物病院に連れていくようにしましょう。

Q8.どうしてウサギは糞を食べるの?
A8.ウサギみたいに肛門から出したものをそのまま口にするなんて…と私達人間は思ってしまいますが、この食糞行動はウサギにとっては害になるどころか「必須の」行動なのです。
健康なウサギが2種類の糞をすることはご存知ですか。
コロコロとした「硬糞」と軟らかい膜に包まれた「軟糞」で、この軟糞は「盲腸便」とも呼ばれています。
ウサギが食べた餌は消化管の中で消化できるものとできないものに選別されます。消化できないものは硬糞として排せつされ、消化できるものは盲腸に戻されて腸内細菌の働きを利用して発酵させるのです。
軟糞(盲腸便)は、繊維質が盲腸内で発酵したもので、腸内で死んだバクテリアに由来する多量のタンパク質やビタミンなどを含んでいます。ウサギはこの軟糞(盲腸便)を再び食べて栄養素を摂取するのです。
また、噛まずに飲み込まれた軟糞(盲腸便)内の膜に守られたバクテリアの働きによって、再摂取された胃の中で炭水化物の分解を助ける働きもしているのです。

ジャンル : ペット

テーマ : ウサギ

■ ウサギさんの避妊手術

ウサギの避妊手術について

近年、ウサギさんは、ペットとしての地位を確立し、
専門店があちらこちらに出来るほどになりました。
これは犬、猫につぐ第3のペットといっても過言ではありません。

そんな背景もあり、ウサギの避妊手術に対する意識も高まっています。
また、ウサギは、高齢に生ると卵巣子宮疾患にかかりやすい、
大きな特徴をもっていることから、長く健康に飼う、という点では、
避妊手術は必須になりつつあるようです。

しかしながら、うさぎに麻酔をかけ、外科手術を行うことに
対し、多大に抵抗がある方が多く、手術はしたいけど、
麻酔が・・・・、という方も多くいらっしゃいます。

手術や麻酔のリスクに関して、事前によくお話しますが、
リスクは伴いますが、通常、健康な個体であれば、
問題になるようなリスクは、とても低いものです、と説明しています。

ただ、漠然と不安になるのではなく、
一体、ウサギの避妊手術は、どんなことをやるのか、
実際にご紹介します。

ガス麻酔を嗅がせることで、麻酔をかけます。
ガス麻酔は、自分の呼吸で吸い込むため、深くかけすぎる可能性はとても僅かです。
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麻酔にかかって寝たところで、麻酔中に必要な心電図などを装着します。
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毛を刈ります。
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切開する部分を手術用消毒薬できれいにします。
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手術開始です。ウサギの避妊手術時間は、通常1時間以内です。
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お腹を閉じて縫い終わったところです。
埋没して縫合するため、ウサギが糸をかじったり、後の抜糸は必要ありません。
もちろん、包帯や、首につけるわっか(エリザベスカラー)の必要もなく、
麻酔から覚めたら、ごく普通の生活が可能です。
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取り出した、健康な卵巣子宮です。
Uの字の左右、上の少し丸い部分が卵巣でそれ以下は子宮です。
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以下、気持ちが悪い画像があります。苦手な方は、ご覧にならないでください。
腫瘍化した子宮です。とても大きく腫れあがっています。
通常、4~5歳を過ぎると、雌は大きな確率でこの病気にかかるといわれています。
当院でも、毎月数件の手術を行います。

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手術するしないは最終的に飼い主さんが決定すべきことです。
「メスを入れるのは、かわいそうだからやらない」
「病気になったときに考える」なのであれば、
それはそれでもっともな理由と思います。
また、
「病気になってから、手術するのはもっとかわいそう」
「病気になるリスクは事前に食い止めたい」
というのであれば、
なるべく早めに手術するのが望ましいでしょう。

しかし、「何歳までにやらないともう遅い、やっても意味がいない」ということは、
は決してありませんので、やる気になったら、信頼できる獣医師に託す、
というのが一番よい選択と思います。

■ ウサギの歯の病気

ウサギの歯は切歯(前歯)も臼歯(奥歯)も生涯にわたって伸び続けます。
歯の咬み合わせが悪いことを不正咬合といいますが、うさぎは、いったんこの不正咬合になってしまうと完全に治すのは難しく、さらに様々な病気を引き起こすことがあります。ここでは、その不正咬合に関連する疾患をすこし詳しく説明します。




●切歯の不正咬合
ウサギの切歯は一年間に約10~12cmも伸びます。通常は食べ物を咀しゃくするときに上の歯と下の歯が擦れ合い、磨耗することによってある一定の長さが保たれています。
ところが切歯の噛み合わせが悪いと正常な歯の磨耗ができなくなるため、歯はとんでもない方向に向かって伸びていってしまいます。これを不正咬合と呼びます。

◎原因
切歯の不正咬合は、遺伝的なものが多いとされています。
特にダッチ系やロップ系は多いとされています。
後天的な要因では、咬むこと、すなわち咀しゃくの回数が少なくなってしまう柔らかい食餌や繊維分の少ない食餌の多給、また金網など極端に硬いものをかじることで、歯根を痛めてしまったり、事故で切歯を破切してしまって歯の向きに変化が生じてしまうことなどが挙げられます。

◎症状
異常な方向へ向かって伸びすぎてしまった切歯は、一見するとすぐに判ります(写真1)。伸びた歯はカーブして口唇部や歯肉に食い込んで潰瘍を形成します。
主な症状として
 1. 食欲が落ちてきた
 2. うまくペレットをくわえることが出来なくなる
 3.歯ぎしりをする
 4.ヨダレが出ていたり、 顎の下が濡れている
などがあります。

◎治療
伸びすぎてしまった歯は、専用の器具を使って正常な長さに切りそろえます。
ニッパーなどで安易にカットしてしまうことがありますが、無理な力でカットしようとすると、縦に割れてしまったり、歯根を傷めることがあるので出来るだけうさぎに詳しい獣医師のもとで行なってもらいましょう。
しかし、処置を行ったとしても、うさぎの歯は前述したように生涯にわたって伸びつづけるため、定期的に行わなければなりません。

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写真1:切歯(前歯)の不正咬合



●臼歯の不正咬合
ウサギの臼歯は名前の通り平らな臼状になっていて食べ物をすりつぶす役割を持っています。左右に臼歯を擦り合わせる動きにより、自然に磨り減り常に一定の長さに保っています。
ところが上顎と下顎のバランスが悪いと臼歯はうまく磨り減らないため不自然に伸びてしまい過長歯という状態になります。
そして臼歯の一部が尖ってきてしまい、頬の粘膜や舌を突き刺して潰瘍を形成します(写真2・3)。こうなってしまうとウサギは痛みのために餌を食べることができなくなってしまいます。

◎原因
切歯の不正咬合と同様、遺伝的な要因や、後天的な要因では、咬むこと、すなわち咀しゃくの回数が少なくなってしまう柔らかい食餌や繊維分の少ない餌の多給、また切歯の不正咬合によって二次的に臼歯の不正咬合を起こすこともあります。
歯周病などで歯根に感染を起こすことによっても発生します。

◎症状
初期には堅いものを食べなくなり、やわらかいものだけを食べるようになります。
尖った歯によって舌や頬の粘膜にできた潰瘍がひどくなってくると痛みが増すため、何も食べなくなってしまいます。
切歯の過長と同様、ヨダレが認められることもあります。
主な症状として
 1.食欲が落ちてきたヨダレが出ていたり、顎の下が濡れている
 2.硬いもの(ペレットなど)を好まなくなる
 3.ペレットをくわえてもポロッと出してしまう
 4.歯ぎしりをする
 5.ヨダレが出ていたり、 顎の下が濡れている
6.食べたそうにしているが、食べれない
などがあります。

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写真2:上顎臼歯の過長歯。
歯が外側に向かって伸びて頬の内側を刺している


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写真3:下顎臼歯の過長歯。
歯が内側に向かって伸びて、舌に潰瘍を形成している


◎治療
不自然に伸びてしまった臼歯を削らなければいけません。
手前に見える切歯の処置とは違い、臼歯の処置は口を開けたままにしなくてはならないため、基本的には麻酔が必要となります。
麻酔下で尖った部分をドリルなどを用いて削ります。
臼歯の不正咬合に関しても切歯の不正咬合と同様にほとんどの場合定期的に削らなければなりません。



◇不正咬合により引き起こされることのある病気◇

●顎骨膿瘍
切歯・臼歯の不正咬合は、歯は口の中に向かって伸びるだけでなく、歯の根が上顎や下顎に向かっても伸びてしまいます(写真4)。
反対向きに(下顎骨や目の方に向かって)伸びてしまった歯はそこで感染・炎症を起こし、膿瘍(膿の入った袋)を作ります。
うさぎの膿は時間がたつとチーズ状に固くなってしまうため、見た目には、デキモノのように見えます(写真5)。
上顎に膿瘍が出来てしまった場合、チーズ状に固くなった膿が眼球を押し出し、出目金のようになってしまうことがあります。
治療は、異常な歯を抜くこともありますが、うさぎの顎骨は非常にもろく、抜くときに骨折を起こしやすいことや、犬・猫よりも血管の分布が豊富なために出血が多い、歯を抜いた穴から感染を起こしやすい、痛みから結局食餌がとれないなどの欠点があるため、治療の選択が限られます。
基本的には膿瘍を摘出したり、切開・洗浄と抗生物質の投与を中心とした治療が行われます。
しかし完治するには長期間に渡ることもあり、また膿の貯留を繰り返してしまうこともあるとても大変な病気です。

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写真4:頭部のレントゲン写真
歯の根元(根尖)が、眼や下顎骨に向かって伸び骨を押し上げている


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写真5:歯の疾患より引き起こされた下顎の膿瘍



◇歯の疾患の予防について◇

このように歯の咬みあわせが悪い不正咬合は、結果的に様々な病態を作り上げます。
たかが不正咬合といって甘くみてはいけません。
ウサギはものを食べるとき、モグモグと咀嚼することによって歯と歯が擦り合わされ、歯を削っています。
ですから、ウサギが何回も咀嚼を行えるような食餌を与えることが大切です。
勘違いしていけないことに、「硬いものを食べる=歯が伸びるのを防ぐ」というイメージがありますが、実際には、硬いものによって歯が削れるというのではなく、上の歯と下の歯が擦れあう事で歯は磨耗します。
よって、いくら硬いペレットを食べたとしても、一回咬んで粉々に崩れてしまうようなペレットであればあまり意味がなく、歯の磨耗は期待できません。
ですから、繊維質が高く、何度も何度も咬まないと飲み込めないような繊維質の多い牧草やペレットがもっとも歯には適しています。
繊維分を多く含んでいる牧草や良質のペレットを中心とした食餌を心がけることが歯の疾患予防ではもっとも重要なことになります。
よく食べるからといって、炊いたお米やクッキーなどはあげてはいけません。
それらを与えると歯に悪いだけではなく、消化器に負担を与えたり、他の餌にくらべると格段においしいので牧草などを食べなくなってしまうからです。
とにかく丈夫な身体、健康な歯は正しい食餌管理にあります。

ウサギは犬・猫のような肉食動物ではありません。
一日でも食餌がとれないと身体に様々なダメージを与えてしまいますので、これらの特徴をよく理解して日々の健康管理を行ってください。
何日もほとんど食餌を食べていないウサギは、歯の処置を行うにも麻酔のリスクが高くなり、麻酔をかけられないこともあります。
「たかが歯の病気」ですが、うさぎの場合はこれで命を落としてしまうこともあります。
食欲が落ちてきたときは早めに動物病院に連れて行って適切な対処を行ってください。

ジャンル : ペット

テーマ : ウサギ

■ ウサギの病気 -皮膚炎・かかとの炎症、脱臼・骨折-

■皮膚炎・かかとの炎症

肥満や不適切な環境で飼育すると、細菌による皮膚病や足底、かかとが脱毛してタコのような状態になり、化膿、潰瘍を起こすことがしばしばみられます。
高温多湿な不衛生な環境は、柔らかく柔軟な被毛を痛め、薄い皮膚にダメージを与えます。

【症状】
弛んだ部分の皮膚やお尻の周りに細菌感染を起こしやすくなり皮膚病を招きます。
また金属のメッシュや固い床材で飼育すると、肉球のない足底部に炎症、化膿を引き起こし、膿瘍(膿の固まり)を形成したり、関節に及ぶとうまく歩けなくなってしまったりします。
運動不足や肥満も四肢に負担をかけ、足底に潰瘍を引き起こしやすくなるといわれています。

【予防のポイント】
予防には、あたりまえのことですが常日頃から掃除を行い、しっかりと衛生管理をします。
また空気が淀んで温度や湿度が高くならないようなケージ(メッシュケージなど)で飼育します。
床には、固い素材のものを用いるのではなく、牧草を厚めに敷き詰めたり、ざらつきのないスノコを用います。

【治療】
治療には、局所の消毒や全身的な抗生物質の投与、包帯などの処置を行います。
またそれと同時に飼育環境をもう一度見直し、衛生的に管理し、床を柔らかい素材のものを敷くようにします。
ひどくならないうちに早めに診察を受けるとよいでしょう。

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俗に「ソアホック」と呼ばれる、かかとの炎症

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■脱臼・骨折

ウサギの骨はとても軽くできています。
骨を少しでも軽くして、素早く逃げたりするのに都合のよい作りになっているのかもしれません。
したがって同じ体重の犬や猫と比べても骨がとても弱く、また損傷すると治りにくい傾向にあります。
ウサギは神経質な一面をがあり、驚いたりするとパニックを起こし突発的に動くので、そのときにどこかにぶつけてしまったり、つかまえようとするときに思わず力が強くかかったりししてしまって、簡単に脱臼や骨折を起こしてしまいます。
それらが起きやすい部位としては、後肢(頸骨や大腿骨)や脊椎(腰椎など)です。
脊椎を痛めると下半身不随になることもあり、糞尿のコントロールが大変になってしまい車椅子を必要とするウサギもいます。

【予防のポイント】
脱臼、骨折の原因としてもっとも多いのは、高いところから落ちてしまったり、抱き方の失敗よって簡単に起こしてしまいます。
また飼育ケージ内でのトラブルでも多くみられます。
ウサギはもともと立体活動を行わない動物なので、高さに対する恐怖心がほとんどなく、注意なしに簡単に落っこちてしまいます。
部屋の中で遊ばせるときには、ベッドや階段などの段差には十分気をつけたいものです。
また、不安定な抱き方や大きな音はウサギを暴れさせることになり、その結果として脱臼や骨折を招くいてしまうので、いつも優しく上手に扱う方法を知っておく必要があります。

【治療】
骨折や脱臼に対しては、ギプスを使って患部を外部から固定したり、外科的に金属を埋め込んで治療することもあります。

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■ ウサギの病気 -スナッフル、卵巣子宮疾患-

■スナッフル

スナッフルとは、くしゃみや鼻汁を主として副鼻腔炎、気管支炎、肺炎を症状とする呼吸器をの病気の俗称をいいます。
飼育されるウサギによく見られる疾患の一つで、初期は軽いくしゃみなどの鼻炎症状ですが、進行すると鼻水が膿のように進行しいきます。
原因はパスツレラ菌といわれる細菌で、鼻水などで簡単に伝染してしまい、多頭飼育していると集団で発生、蔓延してしまうことがあります。
軽い鼻炎かなと思って甘く見ていると肺炎や胸に膿がたまったりすることもあり、時に致死的になる病気の一つですので、そのような症状がみられたら早めに獣医師に相談しましょう。

【症状】
ウサギはその不快感から前足で鼻を擦ることから、前足の内側の被毛はゴワゴワの状態になります。
また咳や呼吸の度にグシュグシュ、ズーズーといった「スナッフリング・ノイズ」と呼ばれる音が聞こえてきます。

【予防のポイント】
飼育環境には、夏場は高温多湿にならないように風通しのよい場所にケージを置いたり、換気扇をつけるなどして喚起に気をつけます。
ケージ内に発生したアンモニアは呼吸器の粘膜を刺激し、細菌感染を起こしやすくなるのでいつも清潔にしておきます。
逆に冬場の温度の低下もストレスになるので、16℃以下にはならないように気をつけます。
もちろん保菌者のウサギとは接触させてはいけません。

【治療】
治療には、抗生物質を投与して、同時に症状にあわせてそれに対する治療をします。
治療に対してうまく反応したとしても、完全に菌をなくすことはできず、一見完治したように見えても保菌者になっていることは覚えておかなければなりません。
ストレスや免疫力の低下がきっかけで再発する可能性もあります。

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■卵巣子宮疾患

ウサギには卵巣子宮疾患の発生が多く知られています。
黄体の遺残、子宮蓄膿症、子宮水腫、子宮の腫瘍などが認められます。

【症状】
病気の初期の段階では無症状のことも多く、攻撃性が高まるといった行動がみられることもあります。
また、元気がなくなったり、腹部が膨れてくる、陰部から膿が出てきたり、出血することもあります。
ウサギのおしっこは赤い色をしているので気づきにくいですが、おしっことは関係なく赤い分泌物が出ることで区別します。
いずれの卵巣子宮疾患も3歳齢以上の中高齢ウサギに多くみられます。

【予防のポイント】
飼育しているウサギに赤ちゃんを産ませる予定がないのであれば、よく雌の犬や猫が行うと同じ避妊手術を行うとよいでしょう。
避妊手術を行って卵巣子宮を摘出すれば将来的にそれら卵巣子宮疾患の心配から解放されます。
また攻撃性が減少したり、極端な求愛行動を弱めたり、トイレのトレーニングがスムーズになることがしられています。

【治療】
卵巣子宮疾患になってしまった場合は、外科的に卵巣子宮を摘出する手術が確実です。
全身麻酔をかけての手術ですのでウサギに詳しい獣医師を充分に相談しましょう。

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卵巣子宮腫瘍による陰部出血

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