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■ フェレットの副腎疾患

フェレットの副腎疾患は、比較的多い病気で、あらゆる年齢でみられます。尾や体側の脱毛を主な症状とします。病気が進行すると頭部と四肢を除いて毛がすべて抜けてしまい、また様々な病気を引き起こします。
一般に冬から春、夏にかけての発症が多くみられ、秋に向かうと一時的に発毛などの改善傾向がみられることもあり、季節性の脱毛と副腎疾患の脱毛との区別がしにくいこともあります。
主な原因は、副腎の腫瘍(ガンやできもの)や過形成(大きく細胞が増えること)によって引き起こされます。


写真1:副腎疾患に特徴的な尾部から体側にかけての脱毛
【症状】                     
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副腎疾患の主症状としては尻尾から体側にかけての脱毛です。
その他に、
1)メスでは陰部や乳腺がはれたりすることも
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2)体臭がつよくなることも
3)オスでは攻撃的な性格になったり前立腺が腫れたり、尿が出にくくなったり
4)進行すると、貧血、脾臓が腫れてくる、弱ってくる
5)低血糖を起こす病気(インスリノーマ)になることもあります。
などがあります。


【原因】
遺伝的な要因、日照周期の問題、早期の不妊手術により、体内のホルモンバランスが崩れることで副腎の疾患が起きると言われていますが、最も有力な説がやはり早期の不妊手術とされています。
フェレットは、交尾繁殖動物であるために、交尾がなされず発情が続くと、骨髄が抑制されて貧血を起こすことが知られています。そのためにペット用のフェレットは販売する前に不妊手術を受けてから販売しています。
早期の不妊は大人になってから、ホルモンのバランスを崩しやすくなる傾向にあり、それがきっかけで副腎が大きくなってしまうと考えられています。
副腎が大きくなると、そこからステロイドホルモンという性ホルモンが過剰に分泌され、それがもとで、脱毛や前立腺肥大などの症状を現わすようになります。               
 
【検査・診断】
腫瘍や過形成で大きくなった副腎をレントゲン、エコー(超音波)検査、触診などで確認します。正常は大体4ミリ以下、異常は4ミリ以上とされています。しかし、大きいと異常と言えますが、大きくないからといって異常ではないとは言えません。小さくても異常のことがあります。
また血液検査によって血液中ホルモン濃度の測定を行いステロイドホルモン3種(アンドロステンジオン、17αヒドロキシプロゲステロン、エストラジオール)を測定します。うち、1つ以上が上昇していると副腎疾患と診断します。
また、特徴的な脱毛によって暫定的な診断を下すこともできます。
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【治療】
副腎疾患の治療には、大きく分けて、手術を行う「外科的治療」と主にお薬で治療する「内科的治療」の2つの方法があります。
外科的な治療として、異常な副腎を摘出します。外科手術では、左右の副腎を摘出するのが目的ですが、右の副腎は、大きな血管(後大静脈)と接しているので難易度の高い手術になります。
内科的な治療方法としては、副腎から過剰に分泌されるステロイドホルモンを抑制するホルモン剤の注射を行います。1~数ヶ月持続する注射ですが、効果が現れるまでに時間がかかり、定期的に数回にわたり接種する必要があります。ホルモン注射は経験的に約80%以上の個体に有効ですが、副腎がガン化したものや異常に腫れてしまった場合には反応しない子もいます。
治療を開始しても副腎の大きさや脱毛、身体的な変化を時間を追って確認する必要があります。
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写真2:治療開始より2ヵ月、発毛がみられる(写真1の個体)

★現在、根本的な治療としては外科的な治療が現在のところ最も効果的といわれています。しかし、高齢な個体や、病状が進行している個体、他の病気が併発している個体では、手術が出来なかったり、あまりにも副腎が大きくなってしまった場合には手術適応ではなくなってしまうこともあります。その様な場合には、ホルモン注射によって症状を緩和させることがあります。
また外科的に切除を行った後、ホルモン注射を必要とする場合ももあります。

★フェレットの副腎疾患には外科的治療や内科的なホルモン療法などその子の年齢や状態、病気の進行度に合わせたムリのない有効的な治療を選択しなけらばなりせん。また副腎疾患にともなう、前立腺疾患ややインスリノーマなど難治症例にも対応していかなければなりません。フェレットの副腎疾患でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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ジャンル : ペット

テーマ : フェレット

■ フェレットの病気・2

飼育している動物を病気にさせたくないのは飼い主さんだれもの願いです。フェレットは家畜化されての歴史が、他のエキゾチックアニマルと比べてとても古く、また多くの疾患が知られています。リンパ腫やインスリノーマなどの腫瘍や、ホルモンバランスが崩れる内分泌疾患などは比べても比較的遭遇する機会の多いといえます。
フェレットは比較的体力もあり、慢性消耗性疾患には強い一面がありますが、それでも体が小さい分、病気が進行してからの回復はなかなは難しい動物です。したがって、体調になにかおかしな変調がみられたら様子をあまり見ずに病院へと相談しましょう。




■尿石症
フェレットは猫と同様、尿石症が多い動物ですが、最近では栄養面が改善されたため、今では少なくなってきているようです。好発年齢はありませんが、尿道が細い雄では、砂状の結石が詰まり尿道の閉塞をよく起こします。
結石の中でもストルバイトによるものが多く、膀胱炎を併発している場合も多いようです。ストルバイトの原因は、はっきりしたことは分かっていませんが、ドックフードなどに含まれている植物性蛋白質が尿のpHを上げることにより、アルカリ尿で生産されやすいストラバイトが生産されやすくなると考えられています。これらの要因以外にも、細菌感染によるもの、また遺伝的素因があるのではないかといわれています。 

【症状】
尿路の閉塞が無い場合には、頻尿、血尿をはじめ、尿漏れによっていつも会陰部が濡れていたり、舐めて気にしているなどの行動が上げられます。閉塞の状態になってしまうと排尿困難からいつもトイレで尿を出そうとする仕草が見られるようになります。また性格が荒くなったり、鳴き声をあげることもあります。長く続けば食欲不振、沈鬱などをひき起こします。
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尿に含まれた結晶       膀胱内の結石(矢印)

【治療】
尿路の閉塞の有無に関わらず、補液などの輸液療法を行い、閉塞している場合には一時もはやく閉塞した尿路を解放する必要があります。雄のフェレットでは、陰茎骨が曲がっているために、尿カテーテルの挿入にテクニックを要します。どうしても排尿できない緊急事態には、膀胱穿刺や膀胱切開術を行う必要があります。雄で再発を繰り返す場合には、会陰尿道瘻術を施すこともあります。ストルバイトの予防には、尿pHを下げておくように良質の動物性タンパクを与えるようにします。猫の尿石用のs/dなどの処方食は、嗜好性が悪いことやフェレットに対して十分なタンパク質を含んでいないことからいまのところあまり現実的ではないようです。

■インスリノーマ
インスリノーマは、すい臓のベータ細胞が腫瘍化を起こし、そこからインシュリンを過剰に分泌してしまう病気です。インシュリンは、血糖値を下げるホルモンですので、インシュリンが多くなると、血糖値が下がってしまい、様々な症状を現わします。放っておいて、長期に低血糖状態が続くと、神経や脳にダメージを与え、最悪は死んでしまう病気です。インスリノーマは副腎疾患と併発することも多いといわれています。

【症状】
初期のころは特別症状も見られませんが、なんとなくだるそうにしている、元気が無い、寝ている時間が長くなるといった症状があります。また、因果関係ははっきりしていませんが、治り難い下痢が続くこともあります。さらに血糖値が下がると、震え、痙攣、発作、急にグッタリしてしまう、悲鳴を上げる、などの症状がでます。

【治療】
治療には、腫瘍ですので大きく外科的治療、内科的治療の2通り、もしくは組み合わせて行います。外科的治療は、腫瘍化したすい臓の一部を切り取る手術をします。ただし、すい臓は繊細な組織ですので手術は慎重に行わなければなりません。内科的治療は、血糖値を上げる薬や腫瘍化したすい臓の細胞を破壊する薬などを用いて治療し、定期的に血糖値を測定し、薬の量を調節します。インスリノーマになってしまった個体では空腹時間が長くなると低血糖を起こしやすいので、頻回に食餌を与えるように心がけましょう。

■腫瘍
フェレットは比較的腫瘍疾患に罹患してしまうことの多い動物といわれています。一般には中年期から老年期にかけて発現することが多く、いままでに様々な腫瘍が報告されています。副腎の腫瘍(「フェレットの副腎疾患」で詳しく説明)をはじめ、若い個体でも見られるリンパ腫、肥満細胞腫などがよく知られています。
腫瘍になりやすい原因としては、遺伝的要因や早期に行う避妊、去勢手術によるホルモンバランスの不均衡によるもの、自然の日照時間あるいは日光浴の欠如、ウイルスなどの感染症によるもの等が考えられていますが、犬猫と同様、はっきりとした原因を特定することは難しいようです。
やはり犬猫と同様に、腫瘍と診断したフェレットには、充分な身体検査を行い、治療方法、予後をあらかじめ予測して、飼い主さんに充分な説明をしなければなりません。
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お尻にできた腫瘍

■その他の病気
診察するなかで、よく見かける病気として、老齢個体や柔らかいフードを好む個体に多い歯石や歯肉炎、歯の破損よって引き起こされる歯髄炎があります。また飼育管理の初歩的な過ちによって異物を誤食することによって起きる異物による腸閉塞、夏の時期の不注意によっての熱射病、日射病なども起こしやすいです。これらの病気のほとんどは飼い主さんの飼育のちょっとしたミスや勘違いなどから起因することが多いようです。

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テーマ : フェレット

■ フェレットの病気・1

飼育している動物を病気にさせたくないのは飼い主さんだれもの願いです。フェレットは家畜化されての歴史が、他のエキゾチックアニマルと比べてとても古く、また多くの疾患が知られています。リンパ腫やインスリノーマなどの腫瘍や、ホルモンバランスが崩れる内分泌疾患などは比べても比較的遭遇する機会の多いといえます。
フェレットは比較的体力もあり、慢性消耗性疾患には強い一面がありますが、それでも体が小さい分、病気が進行してからの回復はなかなは難しい動物です。したがって、体調になにかおかしな変調がみられたら様子をあまり見ずに病院へと相談しましょう。




■ミミヒゼンダニ感染症
犬や猫と同様にフェレットもミミヒゼンダニ(Otodectes cynotis)に感染します。特に若い個体に多く見られます。進行すると黒褐色の耳垢が溜まり、特異な匂いを発したり慢性的な外耳炎に移行します。ミミダニが感染している動物から直接接触によって感染するので、ペットショップなどからもらってきてしまう場合が多いようです。ダニの寄生により痒みが生じるため、耳を痒がるという主訴で来院することが多いです。耳垢にKOHを垂らして直接的に鏡検することによってダニを確認することができます。

【症状】
フェレットはもともと耳垢がたまりやすい動物ですが、このミミダニが感染すると痒みをともない、黒褐色の耳垢が溜まります。耳を掻いたり、頭を振ったりしはじめます。また頻繁に掻くために、耳の周りにかさぶたや耳血腫ができたり、二次感染によって炎症を起こし耳道を塞いでしまうこともあります。
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黒褐色の耳垢が溜まる

【治療】
殺ダニ剤の点耳や全身的に駆虫剤を投与して治療を行います。フェレットの耳は耳道が狭く、うまく薬が浸透しないこともあるので、点耳薬を投与する場合には投与前に耳垢など溜まった分泌物をきれいにクリーニングする必要があります。
 ダニは卵から成ダニになるまで約3週間かかり、そのあいだ治療を継続しなければならないこともあります。またフェレットを多頭飼育していたり、猫と同居しているフェレットの場合はその動物間での感染が起きるので、同時にダニの駆除をしなければなりません。

■ジステンパー感染症
パラミクソウイルス科のジステンパーウイルスが原因で、感染するとほぼ100%死亡することが知られている恐ろしい感染症のひとつです。このウイルスはイヌ科はじめイタチ科、アライグマ科の動物の動物に感受性があります。ウイルスの伝播は、感染した動物からの飛沫感染を主として目やにや鼻汁、尿、糞便の直接的な接触によっても成立します。ジステンパーウイルスの潜伏期間は7~10日で、感染後7日目よりウイルスを排泄します。罹患したフェレットは、免疫抑制を起こし、細菌の二次感染を引き起こしその結果さまざまな呼吸器症状を引き起こします。

【症状】
7~10日の潜伏期間の後、食欲不振、結膜炎、粘液膿性分泌物が目や鼻から見られ、その時期に発熱を伴うこともあります。その後、二次感染により顎に水疱や発疹がみられ、肛門周囲や鼠蹊部にまで広がっていき、次第に眼瞼周囲、鼻鏡、顎、口唇に特徴的な茶色の痂皮が形成されます。また手足のパットの部分はイヌと同じように角化異常がみられ、ハードパットといわれる状態になります。これらの症状を経過した後、興奮、流涎や眼球震盪、運動失調などの中枢神経症状に移行しやがて死亡に至ります。

【治療】
残念ながらジステンパーに感染してしまったフェレットの有効な治療法は知られていません。二次感染を防ぐ意味で抗生剤の投与をしたり、補液などの対症療法を行います。症状がひどく苦しむ場合は、安楽死も選択肢のひとつとなります。予防は、ジステンパーワクチンの接種になりますが、
現在日本には、フェレットに認可されているワクチンがありません。したがって替わりに犬用のワクチンを打つことがなされています。種類の多い混合ワクチンは理想的ではありませんが、鶏卵組織で培養された弱毒ワクチンであれば危険性が低いとされています。

■インフルエンザ感染症
フェレットは古くから実験動物として扱われてきたと以前にも書きましたが、その実験のひとつとしてこのインフルエンザの感染実験があります。人のインフルエンザのいくつかのタイプでは、フェレットに感染することが知られています。飼育しているフェレットで感染した多くは、やはり飼い主さんなど人から染されるケースが多いようです。
インフルエンザに感染したフェレット、人の鼻汁や目やになどの直接ないし飛沫による空気感染を起こします。呼吸器症状が主体ですが、ひどくなると消化器症状を起こすこともあり、とくに若い個体のフェレットでは命取りになる場合あります。

【症状】
ウイルスに感染した場合2日ほどで諸症状が見られます。くしゃみ、鼻水、目やに等の呼吸器症状をはじめ、食欲不振、下痢、脱水を呈することもあります。また感染初期では発熱がみられることもあります。通常、大人のフェレットであれば感染後1~2週間で回復することが多いのですが、若い個体や新生児では二次的な感染を伴って肺炎などを起こし死亡することもあります。

【治療】
補助的に水分補給や症状軽減のため抗ヒスタミンなどの対症療法を行い、二次感染を防ぐ意味で抗生物質などを投与します。成体のフェレットであれば、1~2週間の間に抗体が産生されて自然に回復がみられます。


■エストロジェン中毒
この病気は、エストロジェン過剰症とかエストラスなどとも呼ばれ、ひどい場合には死亡することもあります。フェレットはもともと交尾排卵動物ですが、逆にこの交尾刺激がないと排卵が起きないため発情が持続します。発情中、卵巣から分泌させるエストロゲン(性ホルモン)は、発情期特有の身体的変化を引き起こすだけでなく、造血器である骨髄の機能を抑制するという働きを持っています。その結果、発情が長く続くと、エストロゲンが必要以上に分泌されることになり、その作用によって骨髄形成不全を引き起こします。そして白血球減少や血小板減少などの再生不良性の貧血を起こすことになります。

【症状】
臨床症状は多岐にわたります。元気消失、食欲不振をはじめ、尾部、腰部、体側の左右対称性の脱毛、外陰部の腫脹、粘液の分泌、それらによる会陰部、鼠蹊部の濡れが見られます。
また貧血のため、歯肉、結膜などの蒼白が認められ、ときに心雑音が聞こえることもあります。

【治療】
原因であるエストロジェンの分泌を押さえるために、通常は卵巣子宮摘出術を行います。また全身的な状態によっては体力的にそれらの手術が出来ない場合もあるので、発情を終了させるためにhCGなどのホルモンの注射をします。
また貧血や脱水、感染などが見られる場合には、点滴、抗生剤など必要に応じて支持療法を行い、貧血が回復するまでのあいだ長期にわたる看護を行う必要があります。近年販売されているフェレットはほとんどが避妊手術済みなのでこの心配はありませんが、中には、一部卵巣が残ってしまっていて発情を示すフェレットもいます。

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テーマ : フェレット

■ フェレットの身体

●体型
胴体は長い躯幹と短い足をもっており、しなやかな流線型をしています。獲物を追う際、小さな穴などに潜り込むのに適しています。したがって家の中に直径5センチほどの隙間があれば簡単に潜り込んで出てこなくなってしまうこともあります。また頭部は小さく首としてのくびれがないので、治療などでわんちゃんなどが装着する行うエリザベスカラー(エリマキトカゲのような首の付けるもの)をするのは困難です。

●外皮
皮膚はなめらかで厚く、0.5~1.8ミリにおよびます。汗腺が未発達なために、熱をうまく発散させることができません。したがって気温32℃以上にさらすと容易に熱射病になってしまいます。逆に寒さには強く、被毛は短く波打っている下毛と長くすこし硬い粗毛が組み合わさって体に密な絶縁層をつくっています。
皮膚全体に広がる皮脂腺から分泌されるオイルの効果で、毛艶が出てきます。換毛は春と秋におこなわれます。時期によって尻尾の毛がすっかり抜けてしまうことがありますが、季節繁殖動物のため病気以外にそのような脱毛がしばしば見られます。
フェレット特有の臭いは、メチルカプタンを主成分とする肛門腺と肛門付近の皮膚に多く分布するアポクリン腺、皮膚全体に分布する皮脂腺に由来しています。

●口腔
ふつう犬や猫などの食肉目は、4本の前臼歯を持っていますが、フェレットでは3本しかありません。
歯式は
2(I3/3, C1/1, Pm3/3, M1/2)
の計34本の歯を持っています。
Iは切歯、Cは犬歯、Pmは前臼歯、Mは後臼歯です。永久歯は生後50~74日目で生えます。
まれに、噛むなどを理由にウサギやハムスターの感覚でフェレットの犬歯をニッパーなどで切断する人がいます。言うまでもありませんが切断した永久歯は再び伸びることはありません。歯髄炎の原因にもなるので勝手に破折してはいけません。
小さな頭部のわりに咬筋が発達しているため、噛む力がとても強く捕らえた獲物を離さないようになっています。

●骨格
椎骨はそれぞれ、頸椎7個、胸椎15個、腰椎5(6)個、仙椎3個、尾椎18個からなっています。柔軟性と弾力性に富んだこれらの骨は自分の幅の2倍に満たない場所でもUターンを可能にしています。また骨格自体も同じ体重の犬や猫の骨格に比べると数段頑丈にできています。
肋骨の第10までは胸骨と結合していますが、残りの5組の肋骨は背側に向かって互いに結合し、肋骨弓を形成しています。雄では陰茎骨をもっており、指の数は前肢後肢ともに5本づつです。
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【レントゲン写真(側面像)】

●消化器官
フェレットは完全な肉食動物で、単胃をもち盲腸や虫垂をもっていません。消化管は他の食肉目に比べ短く、十二指腸で10センチ、空腸と回腸で約140センチ、大腸である結腸、直腸、肛門で約10センチとなっています。空腸と回腸の肉眼的な区別できません。
餌を食べてから消化、排泄までの時間は速く、成熟個体で2.5~3時間、2週齢の個体で1時間ほどです。
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【メスの腹腔内臓器】

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テーマ : フェレット

■ フェレットの健康管理

●日常の世話

・ ケージの掃除
フェレットは、消化管の長さが短い関係もあり、排便を1日数回行います。放っておくとすぐにトイレが糞の山ようになってしまいます。毎日または1日に数回は糞を取り除くように心がけたいのもです。飲水ボトルの水は、毎日取り替えるようにして、いつでもきれいな水が飲めるようにしておきます。給水ボトルの中の水を長い間入れたままにしておくと緑膿菌などの雑菌の温床となってしまい、下痢などの体調不良につながってしまいます。

・体のお手入れ
フェレットは個体差こそあれ比較的お風呂が好きな動物です。もともと水辺に生息するイタチやカワウソなどに近縁だからかもしれません。
シャンプーの頻度ですが、月に数回入れる飼い主さんやほとんどお風呂には入れないという人まで様々です。フェレット特有のジャコウ臭が気になるあまり頻繁にシャンプーを入れる人がいますが、それはかえって逆効果になります。シャンプーをすると皮脂は洗い流され、その結果、新しい皮脂が活発に分泌されることになります。そして分泌された皮脂は新しいものほど強い匂いを発します。
過剰なシャンプーは毛艶がなくなるばかりか、皮膚が乾燥するなどして皮膚病のもとにもなってしまいます。そのような理由から多くても1ケ月に1~3回程度がよいと思われます。フェレットに使用するシャンプーはペットショップで入手できる刺激性の少ないフェレット専用のものを用いるのが安心です。
フェレットの毛の抜け替わり時期は年2回春と秋です。自分でも頻繁にけづくろいしますが、猫のように胃内に溜まった毛玉をうまく吐くことができません。したがって、抜け替わりの時期は、いつもより多めにブラッシングを心がけるようにします。使用するブラシは、金属ででできた堅いものは避け、獣毛やゴムでできた柔らかなブラシを使用します。



●飼い主さんが必要な疾病予防
わんちゃんやねこちゃんと同様に、フェレットにも健康な体を維持するためにいくつか知っておかなくてはならないものがあります。

・ジステンパー
フェレットはジステンパーウイルスに対して非常に高い感受性をもっています。感染すればほぼ100パーセント死亡すると言われており、必ず予防しなければなりません。しかし現在日本にはフェレット専用に認可されたジステンパーワクチンが販売されていないことから、何かと議論のまとになっています。文献では鶏卵培養の弱毒の犬用生ワクチンであれば有効とされています。いうまでもなく犬用のワクチンをフェレットに接種するということは、適用外使用になるので飼い主さんの充分なご理解が必要です。

・フィラリア
フィラリアとは、犬糸状虫症のことを指していいます。フィラリアは、蚊の媒介によって感染する寄生虫で、「そうめん」の様な長い寄生虫が主に犬の血液や心臓に寄生する恐ろしい病気です。一方でフェレットにもフィラリアは感染することが知られています。フェレットは体が小さいので、仮に少数の寄生でも重篤な状態になります。
フィラリアの予防は月に一度、内服薬を飲ませます。予防の期間は蚊が出始めてから投薬を始め、蚊が見えなくなって1ヶ月先までの予防になります。生活地域によっても異なりますが、普通は5, 6月より11,12月までが多いようです。かかりつけの獣医師と相談して決めましょう。

・肛門嚢摘出手術
フェレットには、イタチ科特有の、肛門の両脇に匂いをだす袋、肛門嚢があります。敵に出くわしたときや、驚いたりしたときに強烈な匂いを発します。しかし現在、ペットショップで売られているフェレットにはほとんどこの手術が施してあります。もし摘出していない個体でペットとして飼育するのであれば手術を行います。

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■ フェレットの食事

現在、フェレットの食事、栄養学に関しては様々な報告があり、まだまだ解明されていない部分もたくさんあります。ここでは比較的お薦めできる情報について紹介することにしましょう。
フェレットは基本的に肉食性の動物で、必要な栄養素を動物の肉に含まれるタンパク質や脂肪から摂取します。フェレットの祖先と思われる野生のヨーロッパケナガイタチは、小型のウサギやネズミ、またはトカゲや鳥類などの小動物を自然界で捕獲し食べています。しかし、野生ではないペットとして飼育されているフェレットには、手間もかからず成分的にも優れている専用のドライフード(ペレット)が最も適した主食となるでしょう。




●主食には?
フェレットの特徴として、食事が消化管を通過する時間が約3時間と驚くほど早いため、 この時間内に効率よく消化・吸収できる高タンパク・高脂肪の餌が必要となります。餌に含まれる脂肪の量が少ないと、皮膚が乾燥したり、被毛のツヤがなくなるという報告もあります。また、フェレットには盲腸が無いので、炭水化物、植物性タンパク質、繊維質などをうまく消化することが出来ません。こうした成分を含む餌は、ほとんど未消化の状態で排泄されてしまいます。さらに餌の中の植物性タンパク質の割合が高くなると尿石症などを引き起こしやすくなると言われています。フェレットには、アルギニンとタウリンという2種類のアミノ酸が必要です。これらは植物性の餌から十分に摂ることができないので、動物性タンパク質が主原料になっているドライフードを選びましょう。 成分的には、動物性タンパク質35~40%、脂肪20%前後、繊維4%以下の条件を満たすフェレット専用のドライフードが主食として適しています。
フードの裏面には、含まれている原料の多い順に成分表が必ず記載されているので、上記の成分を満たす製品を選びましょう。また、ドライフードは缶詰などの練り状の餌に比べ歯石がつきにくいといった利点もあります。量に関しては、フェレットが一日に必要な カロリーは約200~300Kcal/キロと言われています。フードのメーカーによっても異なりますが、ドライフードとして約30~60gほどが一日に必要な量となってきます。
フェレットは一日の大半を寝て過ごします。そして、目を覚ますとトイレを済ませ、食事を摂り、遊んだ後にまたさっさと寝てしまう動物です。餌は一日のうち5~10回ほどに分けて摂りますので、餌入れの中にはいつもドライフードが入っている状態を保っておきましょう。普段、一日にどのくらいの量を食べているのか把握して、余ったり不足することのないように一日2~3回に分けて与えましょう。また、フェレットは餌の合間に水もよく飲みます。だいたい一日に75~100mlの水を飲むと言われています。特に夏場は脱水を起こさせないためにも水を切らさないよう注意します。
フードに含まれる動物性脂肪は空気に触れ酸化すると劣化が早く、夏場はカビが生えやすくなるので、開封後は密閉容器に移して乾燥剤を入れて保管するなどの対応策が必要です。 生後3カ月未満のフェレットはドライフードをうまく食べてくれないこともあるため、この時期はフードをぬるま湯でふやかしてから与えましょう。生後3カ月ぐらいからは、少しずつ固さに変化をもたせながらドライフードの割合を増やしていけば、いずれドライフードだけでも食べてくれるようになります。

●おやつには??
主食以外の補助食としては、茹でたササミ、レバー、ゆで卵などを与えることができます。ドライフードだけでも十分な栄養を含んでいるので、おやつの与えすぎには注意しましょう。また、調味料なども使用せず単に茹でたものにします。その他に、フェレットバイト、フェレットーンなどの栄養補助製品はコミュニーケーションをはかる時など、2~3日に一回程度の目安で少量を与えます。また、甘い物が大好きなフェレットは、レーズン、パイナップルなどのドライフルーツなども喜んで食べますが、大きな塊だと消化されないので、細かく刻んでごく少量を与える程度にしておきましょう。与えすぎは、下痢や腸炎を引き起こすケースもあるので注意が必要です。
人間用のスナック菓子、チョコレート、牛乳などは与えてはいけません。スナック菓子には糖分や塩分が過剰に含まれ肥満や病気の原因となります。またチョコレートに含まれるテオブロミンという成分は中毒を引き起こしてしまいます。牛乳はその中に含まれる乳糖をうまく分解できずに下痢を起こすフェレットもいます。
やはり、専用フードを中心に、おやつはおやつとして考え、与えすぎには充分注意しましょう。

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テーマ : フェレット

■ フェレットの飼育

健康なフェレットはよく食べ、よく眠り、活発で大の遊び好きです。暗い狭いところが大好きで、部屋に放しているときに、タンスや冷蔵庫の裏に潜り込んでしまいことがあります。何かのきっかけで事故にならないように、隙間を事前に塞いだり、放しているときはいつも目を光らせておきましょう。また暑さにも弱いので、夏は熱射病にならないように気をつけましょう。



・ケージ
四方ふさがった水槽タイプのケージは、湿気やアンモニアの問題などから飼育に向いていません。金属で作られたワイヤーケージを用いて、底面積70センチ×50センチ高さ45センチ位が理想的です。もう少し小さくてもかまいませんが、ケージの中で遊んだり、トイレ、餌入れ、ハンモックなどを設置することを考えるとやや広いくらいが使いやすいでしょう。ケージで一番注意しなければならないことは、ワイヤーの間隔です。狭いところに潜り込むことが大好きなフェレットは、一般にケージに5センチ以上の間隔があれば出られてしまうと言われています。運良く、そのまま出てくれればよいのですが、肋骨等が引っかかって出られなくなってしまっては大変危険です。
フェレットは、暑さに弱い動物です。汗腺が未発達なために33℃以上は耐えられません。夏の暑い時期は、エアコンで温度管理をするのはもちろんのこと、湿気も大の苦手です。高温多湿の環境下では、すぐに熱射病に陥ってしまうのでケージの置き場所にも注意が必要です。フェレットにとって、温度15~25℃、湿度45~55パーセントくらいが理想環境と言われています。

・トイレ
フェレットはトイレを覚えさせることができます。トイレはケージ内の隅に設置します。フェレットは、お尻を上げ、バックしながら便をする習性があるので、前方が低く後方が高いものを使用します。市販のフェレット用のものはこのような作りになっています。一日に頻回に渡って排便を行いますが、きれい好きでいつも同じ場所で排便するのでしつけ自体は難しくありません。トイレの中には猫用のトイレの砂やペットシーツを入れておきます。

・水入れ
糞尿による汚染を防ぐため、倒してこぼしたりしないために給水ボトルを用いるのが一般的です。給水ボトルを用いると一日の飲水量も把握できます。常に新鮮な水を用意しておきます。だいたい一日に75~100ミリリットルの水を飲みます。給水ボトルは、傾いていると水が出ないこともあるので設置したらノズルの先のボールを指でつついてきちんと水が出るか確認しておきます。

・餌入れ
フェレットはケージの中でも活発に動き回るので、簡単にひっくり返されないような重さのあるものを用います。陶器やステンレスでできたものが使いやすいでしょう。置く場所は、トイレと反対側の隅に置きます。

・寝具
フェレットは柔らかい寝床を好むので、ハンモックや丈夫なタオルをつり下げると、その中に潜り込んで寝ます。ペットショップでは専用のハンモックが何種類も売られています。寝床の中にハンカチや小さな布きれを入れる飼い主さんもいますが、あやまって食べてしまったり、ほつれて糸状の異物を飲み込んでしまう危険があるので注意が必要です。

・おもちゃ
遊び好きなフェレットは、身近にあるものは何でもおもちゃにしてしまいます。ウレタンや軟質のプラスチックでできたものや、ボタンなどの取れてしまうようなパーツを用いたものは避けます。ゴルフボールなど飲み込めない大きさの球などはおもちゃに適してます。

・食餌
フェレットは完全な肉食動物で、犬や猫に比べてタンパク質と脂肪の要求量が高いのが特徴です。以前は、良質のキャットフードで飼育できるともいわれてきましたが、いまではフェレット専用のフード、すなわちフェレットフードが比較的容易に入手できるようになったので、それを使わない手はありません。フェレットフードの具体的な組成は、粗タンパク32パーセント以上、粗脂肪22パーセント以上、粗繊維4パーセント以下、灰分7パーセント以下となっています。  一日の必要なカロリーは、体重1㎏あたり200~300キロカロリーです。一日中、好きなときに自由に餌が食べられるようにしておきます。フェレットの消化管は、単純な構造で短いため一度に多量の食餌を消化吸収することができません。だいたい餌を食べてから3時間ほどで消化、排泄されます。 フェレットは、野菜や穀物に含まれる食物繊維を消化することができません。食物繊維の主成分であるセルロースを分解する腸内細菌や消化酵素が欠如しているためです。よく飼い主さんで野菜やビタミンが不足しているという理由で茹でたサツマイモやキャベツなどの野菜、果物などを与えている方がいますが、食物繊維や特に炭水化物の過剰な摂取はお腹にガスが溜まったり下痢や腸炎などの原因になるので注意が必要です。詳しくは、「フェレットの食事について」のエントリーを参考にして下さい。

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